不安症について

不安症とは、高度の不安に伴って起きる心と身体の不調を主な症状とする疾患群です。一口に不安障害(不安症)といいましても様々なタイプがありますが、代表的なものとして、パニック障害、社交不安障害、全般性不安障害などがあります。

パニック障害

パニック障害は、とくに前触れもなく、強い不安感に襲われてしまう疾患のひとつです。激しい動悸や発汗、頻脈、震え、息苦しさ、胸部の不快感、めまいといった身体的な異常が突然起こってしまい、パニック状態に陥ります。こうしたパニック発作は、20~30分くらい、長くても1時間以内には治まります。そのため、パニック発作を起こして救急車を要請し、病院に運び込まれたとしても、医師の診察を受ける頃には発作は消え、心電図検査や血液検査などをしても異常はみられません。

しかし、パニック障害の患者さまは、それで大丈夫になるわけではありません。パニック発作を何度も繰り返すうちに、再び発作を起こしたらどうしようかという、パニック発作に対する強い恐怖感や不安感(予期不安)が起こります。さらに、逃げ場のないような場所で症状が起きたらどうしよう、発作を他人や大勢の人に見られたら恥ずかしい、といった不安や恐怖を生み、人混みへの外出を避けるようになります(広場恐怖)。これに伴い、人前に出るのを嫌って家に閉じこもるようになり、正常な社会生活が営めなくなります。つまりパニック発作だけでなく、日常生活に支障をきたしている状態にあるとパニック障害と診断されます。このようなときは、主にお薬を使って治療を行います。患者さまによっては、誤った考え方や行動を修正していく認知行動療法や、心身をリラックスさせる方法を身につける自律訓練法などの行動療法を追加することもあります。

社交不安障害

社交不安障害は、人前でのスピーチ、初対面の人と接するような社交場面など、周囲の人の注目を浴びるような場面で非常に強い緊張を感じてしまう疾患です。さらに発汗や震え、息苦しさなどの症状も現れます。その後、次第にこのような状態を見られたくないという思いが強くなり、やがて人前に出ることを避けるようになります。

上記のような症状がみられたときは、社交不安障害の可能性があり、その場合は、主に薬物療法や認知行動療法を行います。なお、お薬の効果は飲み始めて早ければ2週間ほどで現れてきますが、この時点で服用を止めてしまうと、再発の危険性があります。症状が出なくなっても自己判断で中断したりせず、必ず医師の指示に従ってください。

全般性不安障害

全般性不安障害は、身の回りの様々なことへの過剰な不安や心配事が毎日のように生じてしまい、日常生活に支障をきたすようになる疾患です。自分ではコントロールできないほど、日々の様々な活動や出来事に対して過剰な不安を感じてしまうため、治療が必要になります。主な症状は、些細なことでイライラする、すぐに疲れてしまう、集中力が低下する、筋肉がこわばる、よく眠れないなどです。発症の詳しい原因は特定されていませんが、脳内の神経伝達物質のセロトニンなどの関係、遺伝的要因といったものが指摘されています。治療に関していうと、認知行動療法と薬物療法を併用することが一般的ですが、患者さまによっても異なります。詳しくは、患者さまに対して直接ご説明させていただきます。